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捨てた「ごみ」のその先を知ることも大事ですね

2019年11月13日

海洋のプラスチックごみ問題は、行政や企業の対策だけではなく、私たち一人ひとりの行動も深く関わっています。現状を再確認し、海洋ごみ削減をもう一歩前へすすめませんか。

雨崎 翔太

生活協同組合コープこうべの宅配業務を行う協同購入センター甲南で、地域担当として勤務する。2017年入所。

原澤 彩さん

近畿大学農学部の学生。水産学科で海棲(せい)哺乳類を研究する。コープこうべのイベントなどで、海洋ごみ削減に関わるボランティア活動を行う。

小島 理沙さん

NPO法人ごみじゃぱん 理事。神戸大学大学院経済学研究科 特命講師。京都経済短期大学 准教授。廃棄物の発生抑制を課題に、社会実験などを通して実証的な研究をすすめる。
https://gomi-jp.jimdo.com/

海のプラスチックごみが問題になっています

雨崎

トラックで組合員さんのお宅に商品を届ける業務をしています。今、世界的な課題になっている海洋ごみ問題が気になっています。

原澤

近畿大学農学部水産学科海棲(せい)哺乳類学研究室の学生です。今年の夏にコープこうべさんの余島キャンプのボランティアに参加して、「海のごみ」をテーマに子どもたちに授業をしました。まだまだ勉強中ですが、海洋ごみ削減の活動に関わっていきたいと思っています。

小島

神戸大学の教員です。専門は環境の経済学で、環境と経済を両立させながら社会をつくるという研究をしています。2006年にNPO法人ごみじゃぱんを設立して、神戸大学の学生たちと「容器包装を減らすことで、消費者の意識がどう変わるのか」という実証実験もしてきました。
海洋ごみに関しては、学生たちと神戸市の川から海に流れ込む「ごみ」の種類や場所をマップに落とし込んで検証しているところです。

雨崎

今、海のプラスチックごみが問題になっていますが。

小島

海にはいろんな「ごみ」が流れ込んでいるんですが、海の環境や生態系に一番影響があるのがプラスチックだと言われています。プラスチックは分解しないからなんです。

原澤

海はつながっているので、日本だけじゃなくて世界中の海に、たくさんの「ごみ」が流れ込んでいますよね…。

雨崎

そうですよね。でも、私たちは基本的に「ごみ」を分別して回収に出します。分別されたプラスチックごみはどのように処理されているんでしょうか。

小島

回収されたプラスチックごみはリサイクルされたり、焼却や破砕をして熱やエネルギーに利用されたりします。残ったプラスチックで、有価で売れるものは外国に輸出されます。

原澤

日本のプラスチックごみは年間900万トンあって、そのうちの100万トン(2018年現在)くらいが東南アジアに輸出されているんですよね。

小島

はい、リサイクル資源として利用されています。日本のプラスチックごみのうち、特に自治体が回収したペットボトルはきれいで使いやすいので良い資材になります。でも、ごみの処理能力は国によって違うため、輸入しても再利用しないものは、他のごみと一緒に川や海に平気で捨ててしまう国があるんですよ。海洋ごみは日本の問題としてみるのか、世界の問題としてみるのかで解決しなければいけない課題が違ってきます。

直接的な影響を感じないから意識しないのかな

雨崎

日本の海岸に大量のごみが落ちているというのも身近な問題の一つです。それらは、海外から流れ着いたものばかりではないと思うのですが。

小島

実は日本の海岸には、ペットボトルや弁当殻(がら)、パンの袋なんかが多いんです。いわゆる「ポイ捨て」です。私たちが調べている神戸市の川でも、数十センチおきくらいに「ごみ」が捨てられていますし、道路わきの植え込みにもたくさんの「ごみ」が落ちています。

雨崎

それらが、風などで近くの川や排水溝に飛ばされて、海へ流れていくんですね。公園や河川敷にごみ箱を置いたらいいのかな。

小島

ごみ箱を設置するのはいいのですが、誰かが定期的に管理をしなければいけません。設置するにも、管理するにも税金を使うことになります。川や公園はたくさんあるので、どこまでやったらいいのかという問題も出てきます。

原澤

海に流れるプラスチックで、今使い捨てのコンタクトレンズも問題になっていて。洗面所の排水口やトイレに流したコンタクトレンズが砕けてマイクロプラスチック(※)になって流れて行ってしまいます。

※マイクロプラスチック:サイズが5mm以下の微細なプラスチック

雨崎

これくらいと思ってしまうんでしょうね。

原澤

そうだと思います。

小島

紙たばこもフィルターがプラスチック製品なんです。吸殻を排水溝や川に捨てると、そのまま海に流れてしまうので、これまでに相当な堆積になっていると言われています。

原澤

捨てるときに、ちょっと意識をするだけで違ってくると思うんですけど。

雨崎

自分に直接的な影響を感じないから、あまり意識しないのかな。

原澤

私は鯨類のハクジラやイルカの骨の研究をしていきたいのですが、死んだものからわかることがあるんです。死んだものは死体と骨に分けられます。死体からは病気とか死因などがわかるし、骨からは進化や生態がわかります。イルカの解剖に立ち会ったことがあるんですけど、やっぱり胃の中からプラスチックごみが見つかりました。
去年、鎌倉市の由比ヶ浜海岸にシロナガスクジラが打ちあげられたのを知っていますか。あのクジラって生後3カ月くらいの赤ちゃんだったんです。まだ母乳しか飲んでないはずなのに、なぜか胃の中にプラスチックごみが入っていたと聞きました。今年、フィリピン沖で死んじゃったクジラは、胃の中がプラスチックごみだらけで、出すこともできなくて餌を食べられないから餓死したんですよね。

小島

漁網に引っかかっているアシカだとか、海洋生物の被害記録は1950年ごろからあります。「かわいそう」と話題にはなるんですけれども、動物愛護のアクションにはつながって行かないんです。

雨崎

海の生き物たちが、すごく被害を受けている。人間が排出したもので生き物たちを苦しめていて、「かわいそう」だけで終わるのはすごく悲しいです。

プラスチックをゼロにするというのは、ちょっと難しい…?

雨崎

プラスチックについて、もう少し教えてください。ペットボトルはボトルとラベル、キャップというように分別しますが、同じプラスチックなのに、わざわざ手間をかけて分けることにも理由があるんですよね。

小島

大きくみるとプラスチックなんですが、ペットボトルは単一材料でできているので、繊維やシートにして再商品化したり、もう一度ペットボトルに作り直したりできます。ですから、分けて回収されています。他のプラスチック製品は、用途や目的に合わせて、いろいろな材料を複合して作られているのでリサイクルしにくいんです。路面材くらいにはなるんですけど。

雨崎

「バイオマスプラスチック」というのがありますが、あれは海洋に流れ出ても環境に問題がないんですか。

小島

いいえ。誤解されることが多いのですが、石油由来でも、植物由来でも、化学組成がプラスチックであれば、海洋ごみ問題の視点でいうと同じです。分解しないんです。
もう一つ、生分解性プラスチックというのがあります。これは一応分解するんですけれど、大変長い時間がかかります。

原澤

プラスチックだから同じですよね。海の生き物たちが食べてしまいます。

雨崎

そうなんですね。この前、コンビニでコーヒーを買ったら、ストローを使わなくなっていました。ウミガメの鼻にプラスチックのストローが入ったニュースがきっかけですよね。

小島

世界中でプラスチック問題が盛り上がって、「とにかくプラスチックのストローをやめていこう」となりましたね。でも、ストローをやめるだけで終わってしまったら、海ごみ問題は解決しません。

雨崎

今さらですが、「ごみを海に流さない」ということですね。

小島

はい、いかに人間が水際でストップするかが課題です。

雨崎

プラスチックをゼロにするというのは、ちょっと難しい…?

小島

プラスチックゼロは、すごく難しいです。あらゆる利便性をすべて廃棄しなければいけなくなります。プラスチックは、すごく便利で、安全で、安いんです。身近なところだと、私たちが着ている洋服にも、さまざまなプラスチックが使われていますし、酸素や細菌のバリア性を高めたプラスチック製品のおかげで食品の鮮度を保つことができます。食糧難で困っている国の子どもたちに、安全に食べ物を届けることもできます。大事なのは、使い終わったプラスチックをどう適切に処理するかなんです。

「ごみ」をきちんと処理するための仕組みも必要なのかな

雨崎

『減装(へらそう)商品』というのがありますが、ごみじゃぱんの活動から始まったんですね。

小島

『減装(へらそう)ショッピング』に賛同してくれたメーカーさんの商品で、私たちの活動の原点です。「商品のクオリティに影響がない範囲で容器包装を減らそう」ということを提案して、メーカーさんと一緒に社会実験をしました。その取り組みから生まれたものです。

雨崎

減装商品やラベルのないペットボトルを配達することが増えてきて、企業や消費者の意識も少しずつ変わってきているのかなと感じます。
包装を減らしたり、ポイ捨てをやめたり、きちんと分別したり。一人ひとりが自分の行動を見直してみることも大事ですが、「ごみ」をきちんと処理するための社会の仕組みも必要なのかな。

小島

その通りで、環境保全には社会の仕組みや人間の行動が大きく影響します。例えば、自動販売機の側には、ベンダーさんが回収ボックスを置くようになって、日本の散乱ごみが減りました。そんなふうに、解決するしかけのようなことができるといいですね。

雨崎

自分の手から離れたごみが、どんな工程で処理されたり、リサイクルされたりするのかを知ることも大事ですね。捨てたら終わりじゃなくて、その先を想像することで、もう一歩進んだ行動につながるんじゃないかなと思います。

原澤

一人ひとりが意識することで、ごみ問題は変わっていくと思います。でも、自分事として考えるきっかけがないのかもしれないです。

小島

そうですね。近年、環境保全への意識が減っているというデータがあるのですが、無関心なわけではないと思います。これまでの経験から実感するのは、共感できるきっかけがあれば、積極的に行動を起こす人はたくさんいらっしゃるということです。
今、環境省からの受託で食品ロスのダイアリーアプリを開発していて。このアプリの実証実験に、大勢の市民が協力してくれています。以前、神戸市東灘区限定で『容器包装ごみを減らす実験 減装(へらそう)ショッピング』をしたときにも、たくさんの方が協力してくれました。やっぱり、コミュニケーションは大事だと思います。

雨崎

アプリですか…。今日食べた食品を写真に撮ったら、カロリー計算と一緒に「今日のあなたのごみの量はこれくらいですよ」と読み取ってくれるアプリができないですかね(笑)。

小島

それいいですね!

撮影場所:神戸市須磨区(シーパル須磨)

  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 14 海の豊かさを守ろう

雨崎翔太が感じたこと

海洋ごみについて話をして、特に感じたことがあります。それは、私たち一人ひとりの意識次第で、この問題を改善することも、悪化させることもできるということです。
世界の海はたくさんの「ごみ」であふれています。きれいな青い海も、ごみで汚れると景観が損なわれてしまいます。でもそれ以上に、人間が正しく処理しなかった「ごみ」が原因で、罪のない生き物の生命を脅かしていることに心が痛みます。また、海洋に漂うマイクロプラスチックに有害物質が付着して、それを食べた魚や貝類の体内にも蓄積されています。それがいずれ人間の健康にも影響するのではないかと懸念されています。
今、世界的に海洋プラスチックごみの削減が進められようとしています。私たちも、普段の生活で、マイバッグやマイボトルを使ってプラスチックの使用量を減らすことはできます。それは、とても大事なことです。
もう一つ重要なのは、“適正に最終処理される”ことです。道端や排水溝にごみが捨てられている状態にならないように、しっかり分別して指定の場所に持って行く。ごみが処理場まで運ばれ、リサイクルや焼却などの処理が行われることで、海洋に流れてしまうことはなくなります。
一人ひとりが意識を変えることが、環境改善へと繋がっていきます。私はこれまで以上にごみ問題に関心を持ち、身近なところから取り組んでいきたいと思います。

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