SIDE by SIDE

チームのみんなと考えてみたいなと思います

2019年10月1日

今この時も世界のどこかで内戦や紛争が起こり、苦しんでいる人がいます。私たちは子どものころに「平和の大切さ」を学びました。普段のくらしのなかで語ることがなくても、誰もが関心を持っていること。広島で「平和」を考えてきました。

安彦 恵里香さん

Social Book Cafeハチドリ舎 オーナー。「人と人、人と社会、広島と世界をつなげる」カフェとして、勉強会や上映会、音楽などのイベントを開催している。「6」のつく日には『語り部さんとお話しよう!』を行う。
https://hachidorisha.com/

岡本 忠さん

広島平和記念資料館ヒロシマピースボランティア、被爆体験伝承者(広島市認定)として活動している。1歳5ヵ月の時に被爆。

土屋 駿介

生活協同組合コープこうべの宅配業務を行う協同購入センター東灘で、担当エリアの責任者としてメンバー教育の役割を担う。2017年入所。

社会の問題を知っておく、考えてみる…できてなかったです

土屋

組合員のお宅に食品や生活用品の配達をしています。先日チーフに昇格して、メンバーの育成や数値管理をする立場になったばかりです。実はこれまで「平和」についてあまり考えることがなくて…。今日は新しいことを学んで、自分の価値観を広げたいと思っています。

岡本

私は、定年退職後の再就職で平和記念公園にある広島平和記念資料館(原爆資料館)に配属されました。 それがきっかけで「ヒロシマピースボランティア」に興味を持ち、活動を始めました。 69歳でピースボート(※)に乗ったとき、仲間の被爆者メンバーのみなさんが証言されている姿に感銘を受け、自分も証言者になりたいと思いました。
私は1歳5ヵ月のとき広島で被爆しているので広島市の被爆体験証言者になろうと思ったのですが、「自分の記憶を、自分で話す」ことができないので、被爆体験証言者に該当しないということでした。 それで、「被爆体験伝承者」に応募して3年間の勉強を終え、認定を受けて伝承活動を始めました。ここ(ハチドリ舎)で被爆体験を話したり、 全国の学校などから呼ばれて講話したりすることもあります。

※ピースボート:国際交流を目的としたNGO(非政府組織)およびその船旅のこと。

安彦

「安全安心な食べ物を提供する」「広島の人と海外の人が話せる」「被爆者と広島を訪れた人が対話できる」つながりの場をつくりたいと、2017年にこのカフェをオープンしました。
私は、海外で起こったさまざまな出来事の当事者と話をするという体験をしてきました。その体験から、「世界には嫌な事件や事故、紛争、戦争、貧困などの問題がなくならないのに、何もしないのは嫌だ」という気持ちを強く持っています。直接的な支援ができなくても、せめてちゃんと知っておく。自分たちができることはないかと考える。そんな思いで、当事者と出会って仲良くなるイベントを作っています。

岡本

ハチドリ舎のイベントはね、お店とお客さんがアイデアを出して、それをみんなで一緒にやっていくというのがいいんですよ。講演会のように一方的に話を聞くだけじゃなくてね。

安彦

少人数で温度感のあるやりとりができるようにしています。『語り部さんとお話しよう!』というイベントがあるんですが、語り部であるおじいちゃん、おばあちゃんとおしゃべりをしているなかで、「この人の頭の上に原子爆弾が落とされたんだ…」と思う。その感触を体験してほしいです。

土屋

社会の問題をちゃんと知っておく、できることを考えてみる…。僕はできてなかったなと思います。

安彦

知るっていうのは大切なことだと思います。知ることで人は優しくなれます。

どんな思いで、被爆体験を伝える活動をされているんですか

土屋

岡本さんは被爆体験伝承者ということですが、もう少し教えてもらえますか。

岡本

被爆体験伝承者は、3年間勉強して広島市から認定されます。
被爆者がね。自分の被爆体験を勉強する伝承者に教えていく。伝承者は被爆者本人に代わって被爆体験を伝えていくわけですよ。被爆者も最初は不安があったと聞いています。 自分の体験を、別の人が伝えられるのかなというね。心配だったんじゃけど、実際に最初の伝承者が育って活動するのを見て、これは大丈夫という気持ちになったそうです。

安彦

伝承者ってすごいなって思うんです。被爆した人に代わって、経験したことや思いを伝えなきゃいけない。何回も何回も、当事者の話を聞いて被爆体験をつないでいく、平和を紡いでいく。本当に気概をもって臨まないと難しいだろうなって思います。

土屋

岡本さんは、どんな思いで被爆体験を伝える活動をされているんですか。

岡本

どう言ったらいいんですかね。実際に体験されたことを伝えていくというのが、すごく大事だと思うんですよ。やっぱり伝えていかんと。途切れてしまったら、また原爆が使われる時代になってしまう。被爆者がね、頑張って伝え続けることによって、世界中の人に伝わっていってるんですよ。2017年に核兵器禁止条約というものができましたよね。願うことは、「核兵器が無くなること」と「みんなが平和でいられること」です。

安彦

証言をしている人たちは、二度とこんな体験を他の誰にもさせたくないという思いで語っています。核兵器を使用したら、どんな悲惨な状況になるかという嫌な体験を伝えていこうとしている。
伝承者を養成しているのは、体験した人たちがいなくなるからではなくて、核兵器の廃絶が本来の目的だということを見失ってはいけないと思います。

岡本

広島の某高校では、美術専攻の学生が原爆の絵を描くという活動をしています。被爆者の話を聞いて絵にするというのを1年間かけてやっています。一生懸命に話を聞いて1枚の絵を仕上げていくんですが、「これは全然違う」と言われて何度も書き直していくうちに、自分たちが受け継いで伝えていかにゃいけんなという気持ちになるそうですよ。高校生も、私たちも同じです。そういうもんじゃと思うんですよ。一人ではダメですけど、いろんな人がやって、いろいろな形で伝わって行けばと思います。

自分ごとにするにはコミュニケーションが必要なんだと
実感しました

土屋

戦争の悲惨さとか、原爆が落ちて町がこんな状況になったとか。僕が小学生のとき、戦争は歴史の授業でしか触れなかったような気がします。子どもたちに、原爆の話をされることはありますか。

岡本

はい。遠い地域の学校から「広島に子どもたちを連れていけないから、来てほしい」という依頼を受けて、原爆を知らない子どもたちに話をしに行きます。

土屋

子どもたちの反応はどうなんですか。

岡本

聞いたこともない原爆の話だけでは、飽きてくるし抵抗もあるんで、被爆者から伝承した 「家庭の平和や学校の平和を実現する」などの話もしています。子どもたちにとって、学校の平和といったら「いじめをなくすこと」ですよね。 みんな熱心に聞いてくれるし、平和について考えたいと言ってくれます。これは、やっていくべきことだと思っています。

土屋

自分たちの生活に近い話だと理解しやすいですね。今日は、このあと原爆資料館に行こうと思っています。

安彦

本気で全部見ようと思ったら、3時間はかかりますよ。

岡本

最近は生徒の希望で原爆資料館の見学に来るという話も聞きます。そんなときは、平和記念公園や原爆資料館をじっくり回ってほしいなと思いますね。残念なのは、修学旅行で来てもスケジュールの都合で30分間くらいだけ見学して、次の観光地に行ってしまうことです。それだと、通り過ぎるだけの場所になってしまいます。記憶に残ることも少ないでしょうし、かわいそうです。

土屋

せっかく広島に来て平和を学ぶ機会があるのに、自分ごととして考える時間が足りないということですね。

安彦

自分ごととして考えるには、コミュニケーションが必要かなと思います。広島で出会ったり、言葉を交わしたり、人との関わりが大事かな。

岡本

そうそう、そうです。でも、仕事をされていたら、なかなかじゃろうね。難しいよね。

土屋

機会が少ないと思います。今日、お話をさせていただいて、コミュニケーションが必要なんだと実感しました。これまで平和について深く考えることも、行動することもなかったですから。

岡本

それが当然で、今自分が平和かどうか、ということすら考えないですよね。「平和って何?」って聞かれることがあります。 それは、生活することであったり、勉強することであったり…。「これが平和」と答えることはなかなかできないですね。

安彦

「戦争で失うもの」が「平和」なのだとしたら…。失うものは明日の予定だとか、週末の予定だとか、同じ毎日を過ごせなくなることが「平和じゃない状態」なのかもしれません。

行ってみる、聞いてみるから始めたらいいんですね

土屋

今の私たちは平和な状態なんでしょうか。

安彦

私自身はやりたいことができていて幸せだし、身の危険を感じていないし、私の尊厳が奪われていないから、平和な状態にあると思います。けれど、日本が平和なのかといったらどうなんだろう。
命と権利を保障されて、個人が抑圧されずに自分らしく生きられているっていうのが平和だと考えたら、平和だねとは言いづらいです。ご飯を食べられない子どもがいるとか、家から出られない人がいるとか、紛争地でもないのに年間何万人もの自殺者がいるとか、それって平和なのって思っちゃう。

土屋

嫌な出来事だなと感じても、それだけで終わっている人は多いかもしれないです。僕は、紛争や内戦のニュースを見ても、自分ができることはないと思っていました。

安彦

それは、どこかの国で戦争があっても、誰かが亡くなっても、自分とは違うって切り分けが起こっているからなんですよね。全部に通底しているのは差別で、その差を埋めるのは「知ること」「理解すること」だと思います。私は気になったら何でも調べてみるんですが、「知らなかった、そういうことがあったんだ」っていうことは本当にたくさんあります。

岡本

そうだね、知らないことばっかりだもんね。

安彦

それと、すべての人が自分のなかにある暴力性に気づくことも大事だと思います。戦争が起こったら、仕事として人を殺さなきゃいけない、殺さなきゃ自分が殺される。そのシチュエーションになったら、人はおかしくなってしまう。私も、あなたも。だから、そんな状況にもっていかないことが大事なんです。自分はちゃんと考えているかな。自分で考えて行動しているかなと振り返ってみてほしいです。

土屋

僕はチームをまとめる立場になったので、これを機会に、平和のことをみんなと考えてみたいなと思います。どうやったら興味を持ってもらえるんでしょうか。

安彦

すぐに結果は出ないですが、「なんでそれが起きたのか」や「そもそも」を考えるということがすごく大事です。 当事者や有識者に聞いてみるとか、ネットで調べてまとめるみたいなこともきっかけになりますよ。
例えばですが、私は「平和教育がいつ始まったのか」をテーマに連続企画をしたことがあります。原爆の話にショックを受けて、資料館にも原爆ドームにも二度と行きたくないという子どもが少なからずいるんですよね。でも、平和教育を始めた人はそんなことを望んでいたわけではないと思ったからです。
そうしたら、被爆した先生が「もう二度と自分の教え子を戦地に送りたくない」という思いから始まっているということがわかりました。「そうだとしたら、原爆はどれくらい悲しいかということだけにフォーカスされてしまって、先生たちの思いが伝わっていない可能性があるな」とか、「時代とともにそう考えた方がよかったのかな」とか思考することができるでしょ。そういうことが大事だなと思います。

岡本

何もなかったら、人が集まって話をするというふうにつながっていかんのじゃないかね。神戸に戦跡などがありますか。そういうところに行ってみようかということをされてはどうですか。一つのきっかけになるかな。広島に来るというのもいいですしね。

土屋

難しく考えないで、興味があるところに行ってみる、話を聞いてみるから始めたらいいんですね。

安彦

興味がない人を無理やり巻き込もうとすると、それは暴力になっちゃいます。 でも、社会で起こっていることは、他人ごとに思えても関心がないわけじゃないと思います。 一人ひとりと仲良くなって「どんなことだったら興味を持つ?」みたいに聞いてみる。ちょっとでも興味があれば、その人がより理解を深めて発信者になっていくのがいいのかなって思います。

土屋

そうですね。まずは僕自身が発信する人にならないといけないですね。

安彦

伝える立場になったら、調べなきゃいけないし、学ばなきゃいけない。関わり方が全然違ってきますよ。

撮影場所:広島市中区(ハチドリ舎、平和記念公園)

  • 16 平和と公正をすべての人に

土屋駿介が感じたこと

今回、お二人と話をすることができ、とても感謝しています。私は、これまで「平和」に関して、それほど関心がなく、深く考えたことがありませんでした。
そもそも「平和」とは何か。戦争がないということだけでなく、さまざまな要素があるんだと思いました。メディアを見るといじめや自殺、中高齢者のひきこもり、貧困、差別など。自分が住んでいる日本は本当に「平和」なのか。安彦さんの「命と権利を保障されて、個人が抑圧されずに自分らしく生きられているっていうのが平和だと考えたら…」という言葉がとても印象に残りました。
自分が動いて何が変わるのか。何も変わらない。私はこんな考えを持っている一人でした。しかし、まずは起きている出来事を知ること。知れば興味を持ち、そうすれば、自分が出来ることが見つかるかもしれないとアドバイスをいただいて、前向きな気持ちになれました。
少人数でもいいから、家族や友人、仕事仲間と一緒に、これから「平和」について考えていきたいし、行動を起こしていきたいと思いました。

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