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楽しいきっかけが、たくさんあるといいなって思います

2019年7月18日

障がいの有無によって隔てられることなく、すべての人が人格と個性を尊重し合いながらともに生きる社会へ。誰もがくらしやすい地域づくりに、一人ひとりができることは何でしょうか。

清田 仁之さん

特定非営利活動法人「月と風と」代表。ヘルパー派遣業務を行いながら、重い障がいのある人と関わる場を提供することで、人のつながりや地域づくりの活動をすすめる。
https://tsukitokazeto.com

林 優子さん

認定特定非営利活動法人「ぽっかぽかランナーズ」理事長。障がい者ランナーと伴走ランナーをマッチングし、マラソン大会への出場をサポートする。活動を通して、多様な人がともに生きる社会の実現をめざす。
https://www.pokarun.com

田川 瑠美

生活協同組合コープこうべ 宅配業務を行う協同購入センター甲南で担当エリアの責任者として、メンバー教育の役割を担う。2012年入所。

活動を始めたのはマラソン大会がきっかけですか

田川

協同購入センター甲南でチーフをしていて、仕事はチームのメンバー教育や業務課題の進捗管理などです。みんなが楽しく働けるようにすることが役割だと思っています。私は学生のころから社会福祉に興味があって、お二人とお話できるのを楽しみにして来ました。

林

障がい者ランナーと伴走ランナーがペアを組んで、マラソン大会に参加する「ぽっかぽかランナーズ」を運営しています。私の息子はドラべ症候群※という病気で、今25歳です。けいれん発作の後遺症で知的障がいがあります。身体にも障がいがあり、将来は歩行困難になるとも言われました。息子は特別支援学校のマラソン大会で優勝するなど、走ることが大好きな子なんですが、学校を卒業したら走る機会がなくなってしまいます。それで、少しでもたくさん走って思い出をつくろうと、いろんなマラソン大会に参加するようになりました。

※ドラべ症候群:乳幼児期に発症する指定難病のひとつ。全身あるいは半身のけいれんが繰り返し起こり、発作重積(てんかん発作が10分以上継続すること)となることもある。

田川

活動を始めたのは、マラソンがきっかけですか。

林

はい。どの大会に行っても気になっていたのは、障がい者ランナーが少ないことでした。私たちがマラソンに参加できたのは、伴走してくれるボランティアさんがいたからなんですね。だから、一緒に走ってくれる仲間がいたら、走ってみたい人や走らせてあげたいと思う家族が、たくさんいるんじゃないかと思いました。それが今の活動につながっています。

田川

清田さんが運営されている「月と風と」について教えてください。

清田

行政の委託でヘルパー派遣事業をしています。それと併せて、ヘルパー派遣だけでは補えない、つながりづくりや、まちづくりなどの活動をしています。障がいのある人と一緒に楽しい時間を過ごしたり、一人ひとりの思いを実現したりすることを大事にしたいと立ち上げました。

きっかけは、車イスで生活する10代後半の男子のヘルパーをしていたときのことです。ある日、彼から悩みがあると相談されて、「何なん?」って聞いたら「友だちがほしい」と言われました。そのときは、「気さくに話をする仲なのに、自分は友だちじゃないんだ」と、ちょっとショックでした。でも、よく考えたら、週一回仕事をしてハンコをもらって帰るというのは友だちじゃないんですよね。しかも、僕はずいぶん年上でしたから。だったら、同世代の友だちができる環境やきっかけをつくって、その橋渡しをするのが僕の役割かなと思いました。

田川

橋渡しの活動として、どんなことをされているんですか。

清田

例えば、いろんな人が一緒に楽しむ「書道の会」をやっています。できるだけ敷居を低くして、自然な感じで知り合ったり、仲良くなったりできる場づくりのイベントです。人となりを分かり合える仕掛けも必要なので、毎回書道のテーマを決めて、それを書きます。前回は「憧れていた名前」をテーマにしましたね。

田川

「憧れていた名前」というのは、話が盛り上がりそうです!

「おふろプロジェクト」という活動が気になります

おふろプロジェクトの貸し切り銭湯:「月と風と」提供
田川

この事務所には、いろいろ面白いものがありますね。

清田

いつでも誰でも出入りできる場所として開けているから、誰かが勝手に打ち合わせをしたり、イベントに使ったりしています。ヘルパー派遣の事務だけなら、広いスペースはいらないですから。

田川

「おふろプロジェクト」という活動が気になります。

清田

「みんなでお風呂に入ろう」というイベントで、書道の会と同じように場づくりの一つとしてやっています。
重い障がいのある人の入浴介助をしているとわかるのですが、お湯に浸かると体の緊張がほぐれて、とてもいい表情をされるんです。そのことをたくさんの人に知ってほしいと思って、みんなに相談すると「銭湯がいいんちゃうか」という話になって始めました。
尼崎は町の銭湯が多いからすぐに実行できるんですよ。重い障がいのある人を連れて行くと、「この人は何の病気なん?」とか「どうして自分で動けないの?」とか、子どもたちは興味津々で近づいてきます。障がいのある人をお姫様だっこして湯船に入ると、「気持ちいいんやね」「お風呂が好きなんやね」って、みんなで同じ気持ちを分かち合えます。

田川

言葉じゃないコミュニケーションが生まれるんですね!

清田

定休日にイベント会場として開放してくれる銭湯もあって、そのときは普段できないことをして遊びます。大きなフラミンゴの浮き輪を浮かべたり、桶を積んで倒したり、脱衣所で三線を弾いている人がいたりとかね。銭湯で楽しんでいる人たちのなかに、障がいのある人たちもいるって感じです。

田川

そんな風景が当たり前になったらいいですね。みんなが集まる場所で知り合って、分かり合って、友だちになって…。それが、地域にくらす私たちの役割なのかなと思います。

清田

そうですね。銭湯だけじゃなくて、老人ホームのお風呂に入りに行ったり、個人宅のお風呂を借りたりっていうのもやってて。いろんなところに出かけることで、「自分で動けない人がここにいますよ」と伝えることができます。会話ができなくても、みんなの距離が近づいて親戚の家に行ったみたいになれるんですよね。

田川

実は昨日、初めて伴走ランナーとして「ぽっかぽかランナーズ」に参加させてもらったんですけど、半日一緒にいただけでチームのみなさんと仲良くなれました。スポーツを通してだから、すぐに心を開くことができたのかなと思うのですが。

林

私たちのチームは、一人ひとり目標が違います。たくさん走りたい人もいれば、タイムを伸ばしたい人もいます。できること、できないことも違うので、お互いに補い合ったり、助け合ったりしながら走っています。だから自然と距離が近づくんだと思いますよ。伴走経験がない人へのサポートもしますし、こうしてほしいということがあれば伝えます。「走るのが好きだし、それがボランティアになるんだったら」という感じで気軽に参加してもらえるとうれしいです。

田川

親子で参加されている方がいらっしゃいましたね。

宝塚練習会:「ぽっかぽかランナーズ」提供
交野マラソン2019:「ぽっかぽかランナーズ」提供
林

大会会場やランニングの練習場所への送り迎えがあるので、お子さんの場合は保護者が一緒のことが多いです。お子さんに付き合っているうちに、自分たちも走りたくなるみたいです。練習のときはコーチが指導してくれるので、フォームがよくなって、タイムが伸びたお父さんもいらっしゃいますよ。

田川

家族の楽しみになっているんですね。

林

マラソンは誰もが同じ土俵の上で楽しめるスポーツだと思います。障がい者と健常者が楽しく走っている姿を見て、福祉の扉を少し開いてもらえたらいいなと思っています。

視点を変えて考えると、気持ちが楽になります

田川

私は学生の時に、通所施設とグループホームでアルバイトをしていました。言語障がいのある方と話をしたときに、おっしゃっていることが全然わからなくて4回も5回も聞き直しました。やっとわかったときに笑ってくれて、通じ合えたときのうれしさが忘れられません。そのときに、「面白い!」って感じたんです。でも、「面白い」という感覚がよかったんだろうかと今でも気になってます。

清田

なるほど(笑)

林

そんな感じでみんなが近づいて来てくれたらいいですね。私も、言葉がわかりにくい人と話をすることがありますが、根気よく話をしていくうちにわかってきますよ。

清田

そうですね…。「こうあるべき」とか「普通こうやろ」という視点で考えがちなんですが、一度それを見直してみるのもいいかなと思います。知的障がいのある人って自由なんです。どんなに堅苦しい場面であっても、自分のペースでしゃべっていたり、動き回っていたりします。「こうあるべき」という型にはまらない。そんな風に「こうあるべき」というフィルターをなくしてものごとをみたら、「大事なこと」が見えてくるんですよね。

田川

「大事なこと」という視点で考えたら、気持ちが楽になりますね。学生時代、飲食店でアルバイトをしているときに、通所施設で知り合った人がお母さんと一緒に来てくれたんです。すごくうれしそうにされていました。私がいるというだけで、その店が来やすい場所になって、社会に出るきっかけになったんだと思って、私もすごくうれしかったです。

林

外に出るきっかけって大事ですからね。障がいのことをわかってもらえると安心だし、心強いです。じっとできない子どもがいると、保護者は周りのことが気になって慣れないところだと出かけるのをためらってしまいます。でも、わかってくれる人や仲間がいるだけで、気持ちが楽だし出かけやすくなるんです。

清田

周りの人に、「すみません!」って言いながらも、一人じゃないから心の重さが全然違うんですよね。

林

そうなんです。息子が小学生のころ、学校で障がいの話をする機会がありました。てんかん発作が起こった時の苦しさを伝えると、クラスメイトが「きよくんルール」というのをつくって、息子と一緒にできる遊び方を考えてくれました。子どもたちの柔軟な心に助けられることも多かったですね。

チャリティーショップ「ふくる」:「月と風と」提供
清田

新しい事業としてチャリティショップ「ふくる」※を始めたんですが、そのときにレジを置くテーブルの高さをどうするかが問題になりました。うちの店員は車イス利用者です。だったら、テーブルを低くして、他のスタッフも座ろうと店内にイスを置きました。「店員は立つべき」という固定観念から解放された瞬間でした。

※チャリティショップ「ふくる」:寄付された古着を販売するチャリティショップ。訪問介護利用者の仕事づくりの一つとして、
NPO法人「月と風と」が運営。

自然な気持ちで接することが大切なんですね

田川

電車やエレベーターで、障がいのある人を見かけたときに「困っているんじゃないかな」と気になることがあります。そのときに声をかけてもいいのか、手助けするのは失礼ではないのかと迷って、行動に移せないことがあります。

清田

僕が新しいヘルパーさんに言うことですが、「自分がしてほしいことをやれば99%くらいそれが正解」です。「こういうことで困っているんとちゃうかな」とイメージして、自分がしてほしいことを行動に移せばいいと思います。言葉でのコミュニケーションが難しい人でも、「自分に興味を持ってくれているんだな」とか「なんとかしてくれようとしているんだな」とか、そういう空気感は伝わります。だから、そこは、躊躇(ちゅうちょ)せずに声をかけたらいいと思います。自分だったらこうしてほしいと思うことを、ビックリさせないように伝えてみてください。

林

子どもが電車とホームの間に挟まって、私の力では引き上げられないことがありました。「助けて!」と声をあげたんですが、駅員さんが来るまで誰も助けてくれないという辛い経験をしました。「助けて」と声をあげたときには、近くにいる人に来てほしいです。
反対に、大変なときに、「どうしたんですか」「大丈夫ですか」と声をかけてもらって、涙がでるくらいうれしかったこともたくさんあります。「何かお困りですか」と言ってくれるだけで、すごくうれしいです。「大丈夫ですよ」と返事をするときもあるけれど、困っていたら手助けをお願いしやすいです。

田川

普段関わりが少ない人は変に気を使ってしまうのかもしれません。考え過ぎないで、自然な気持ちで接することが大切なんですね。

清田

誰でも年をとるし、病気やケガで誰かの助けが必要になることもあります。障がいのある人が、特別な人ではないんですよね。僕は大学で社会福祉の話をすることがあります。そのときに、将来自分が親になるときのことを想像して、学生たちに出生前診断について考えてもらう時間をつくります。ちょっと厳しいテーマですが、自分ごととして考える体験をしてほしいなと思っています。

田川

林さんや清田さんの活動は、一緒に遊んだり、スポーツを楽しんだり、何かをつくったりすることがきっかけなので、気軽に参加できそうです。そんな機会や場所がたくさんあるといいなと思います。これからのことを教えてもらえますか。

清田

事業収入は、僕たちの活動資金です。ヘルパー事業だけでは不安定なので、自主財源事業として立ち上げたチャリティショップの収益を安定させたいと考えています。今はほとんどがボランティアで運営しているのですが、店員としての時間給にしたら、ほんのわずかにしかなりません。チャリティショップという存在の認知度や価値をもっとあげていきたいですね。そして、「毎日お風呂に入りたい」「たまには温泉に行きたい」「恋人がほしい」「子どもがほしい」…障がいのある人たちの夢を、みんなで実現していこうと思っています。

林

私は、オリジナルの「共生マラソン大会」を開催したいと思っています。いろんなマラソン大会に参加してきましたが、アップダウンが急だったり、時間制限があったりして、車イスで参加できる大会は限られています。そこで、生活車イスや足こぎ車イスのランナーも、タイムをめざすランナーも、誰もが参加できるマラソン大会を考えています。走ることを通して、多様な人が楽しめるイベントにしたいんです。そのためには資金が必要なので、寄付を募ったり、協力していただけそうな組織や団体に助成金の申請をしているところです。

清田

秋に尼崎市の委託事業で「ミーツ・ザ・福祉」というイベントを開催するので、いろんな人と話し合いながら企画をすすめています。そのなかで、元漫才師と車イス利用者が漫才をしたいと準備をしています。漫才にはスタンドマイクがスタンダードだそうですが、舞台に立つと二人の高さが違うから声が拾えません。そこで初めて、これまでの当たり前が通じないことがわかります。台本づくりでも、ネタや言い回しが障がい者に対して失礼な表現になっていないかというやり取りをしています。障がいのある人と何かをつくったり、交流したりすることで気づくことがたくさんあるんですよね。そういう過程も大切にしていきたいなと思っています。ぜひ、来てくださいね。

尼崎市(NPO法人月と風と・藻川河川敷)

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 11 住み続けられるまちづくりを

田川 瑠美が感じたこと

座談会を通して、「障がいのある人と地域の人が友だちになれる場をつくっていきたい」ということと、「何ごともこうあるべきなんて思う必要はない」という二つのことが印象に残りました。
お二人は異なる活動をされていますが、交流の場を設け、楽しいイベントを通して仲良くなるきっかけをつくっていること、そこから参加者や家族など、多くの人の笑顔を生み出していることが共通しているなと感じました。そして、人が心からわくわくすること、自然に笑顔になる楽しいことは、障がいのある人もそうでない人も通じるものがあって、一緒に楽しむことができる。それがお互いを知るきっかけとして最適なものであると知りました。

清田さんは出会いの場を設け、知り合う、友だちになるきっかけづくりをされています。家族やヘルパーさんでは担いきれない、外での居場所になること、友だちになることが地域にくらす私たちの役割なんだと感じました。
「ぽっかぽかランナーズ」の伴走ランナーとして盲目の方と走ったのですが、ロープ一本を共に握って、声を掛け合うだけで、その方は目が見えないことを感じさせないほどいきいきと走られて、私のほうが元気をもらいました。さまざまな障がいをもつメンバーとは、おしゃべりしながらお互いを理解し、距離が縮まり、支援する人と支援される人という枠を越えて、友だちになれた気がしました。楽しいから一緒にいる、楽しいから一緒に過ごす、そんな交流の場がそこにはありました。

これまで障がいのある人と接するとき、「こうあるべき」とか「こう考えるべき」とか、正解を探してきましたが、いい意味で何でもありなんだということを知りました。友だちになってしまうことが一番の理解の近道だと感じました。

地域に障がいのある人がいるのが普通で、少しの手助けがあれば楽しく生きられることを、みんなが知っていて、自然に声をかけることができる。お互いに理解を深めて、友だちになることが、楽しいイベントを通して実行していけたら、誰もがくらしやすい地域づくりへの可能性はどんどん広がるのではないでしょうか。

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