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触れ合ってみたら意外と
ちやほやされました

2019年2月22日

「高齢になっても住み慣れた町で安心して暮らしたい」「最期まで自分らしく生きていきたい」。自分が高齢になったときに、そんな願いを支えられる社会になっていてほしい。その社会をつくっていくのは今を生きている私たち全員の課題です。

町田将人

生活協同組合コープこうべ 協同購入センター姫路東で地域担当として勤務。2016年入所。

宗政美穂さん

特定非営利活動法人福祉ネットワーク西須磨だんらん 事務局長。「困ったときはお互いさま」をモットーに、「住み慣れたところで最期まで安心して尊厳を持って暮らせる福祉コミュニティーづくり」をすすめる。
http://danran.wp.xdomain.jp/

渡辺正敏さん

コープこうべくらしの助け合いの会 活動会員。7年間母親を介護した経験を生かして、高齢者支援や地域コミュニティーに貢献する活動を実践している。

自分にできることから始めました

渡辺

高齢者との関わりは59歳のとき、母の介護がきっかけです。介護に必要な資格を身に着け、10年間は見守るつもりでした。ですが、母の症状が急激に悪くなってしまい7年間しか面倒をみられなかった。だったら残りの3年間は「母にできなかったことを他の人に」と思って、コープくらしの助け合いの会で活動を始めました。仕事は風呂やトイレ、部屋の掃除、洗濯のほかに、男性の場合は草引きや植木の剪定、重い荷物を動かすというのもあります。ほんとは料理が得意なんですけどね。

※ コープくらしの助け合いの会:地域住民の助け合いによって自立したくらしを支える有償の家事支援活動。利用会員が必要とする家事を、活動会員が
 
支援する。

宗政

西須磨だんらんは、震災復興のなかで自治会から生まれたNPOです。一人暮らしの高齢者の困りごとを地域で助け合うしくみが必要だということでスタートしました。私は大学卒業後すぐにボランティアとして参加したのですが、すごく面白い活動だなと思って居ついてしまいました。もう20年になります。活動を始めたころは緊張したり失敗したりでしたが、だんだんと鍛えられて今ではミニデイサービスや居場所づくり事業にも参加しています。

町田

宅配業務をして3年目です。僕は神戸市から明石市に広がる明舞団地に住んでいます。まちびらきから50年以上経つオールドニュータウンで、高齢化が進んでいる地域です。大学生のとき、地元の学生たちが明舞団地を活性化する活動をしているという新聞記事をみて、自分も地元住民として何かしようと参加しました。その経験から地域に貢献したい、高齢者を支援したいと思うようになりコープこうべに就職しました。

渡辺

私は、助け合いの活動と同時に町内会の役員など地域デビューも果たしました。といっても、誰かが「よう帰ってきたな」とか「お帰り」という言葉をかけてくれたわけではありません。介護をしているときは自分たちのことで精一杯だったし、会社勤めをしているときは地域とのつながりがなかったですからね。今は、自分が住んでいる町で人間関係を広げるようにしています。

定年したら地元に仲間がいなくなるかも?

町田

一人暮らしのおばあちゃんのお宅に商品を届けたときのことなんですが。玄関を開けたら背中が痛いとおっしゃって、近所の方と協力しながら救急車に来てもらったことがありました。その時に、「背中が痛かったんやけど、コープさんがもうすぐ来るから、ちょっと待っとったんや」と言われて。週1回の配達時に顔をみて声をかけることが、見守りという役割も持っているんやと実感しました。ただ、一軒に5~10分しか居られないので、十分に寄り添ってあげられません。注文書が書きにくいからと手伝っていても時間が足りないこともあって。なんとかできないかなという悔しさも感じます。

渡辺

ボランティア活動の一つにお話を聞くというのがあるんですが、私がよく聞くのは「こんな長生きするとは思えへんかった」という言葉です。人生100歳時代と言われていますが、ご本人は何歳まで生きるかわからないという不安を抱えておられる。「家族には言えない、迷惑をかけたくない」とおっしゃる方もいますね。

宗政

年を取ると文字も読みにくくなるし、コープさんから届いたものを冷蔵庫に運ぶのも大変になる。洗濯が、ゴミ出しが・・って、ちょっとずつ不便になっていくんでしょうね。あちこち具合が悪くなる体、いくつまで生きるんだろうという不安、知っている人が一人、また一人と亡くなっていく孤独、そうやって悩みが増えていくんだと思います。

渡辺

男性の場合は行き場所がないという声もよく聞きます。そんなお話を聞くと、ちょっと寂しくなりますね。

宗政

そうですね。定年後に行く場所がなかったり、新しい友だちを作るきっかけがなかったりする男性は多いかもしれません。高齢になると男女を問わず友だちを作れる居場所が必要なのかなと思います。みんなでご飯を食べたり、一日を過ごしたりできるところ。同じ年代の人がいて悩みを相談し合ったり、励まし合ったりできるコミュニティーです。困っていることをつぶやいたら、誰かが「ここに相談してみたら」って教えてくれる。そうしたら、支援している組織や団体とつながって、一緒に悩みを解決していくこともできます。

町田

僕が配達している地域は、昔ながらのグループ購入をされている方が多いんです。だから、グループの中に自然と助け合いがあって、お互いに「大丈夫?」って言葉をかけているのをみると「いいな」と思います。僕は就職してから職場の仲間と遊ぶことが増えてきたんですけど、このまま将来定年したら地元に仲間がいなくなるかもしれませんね。

宗政

40年後の話ですか(笑)
うちには男性中心のミニデイサービスがあるんですが、そこで仲良くなったおじいちゃんたちは、帰りにお茶をしたり、お酒を飲んだり、みんなでドライブ旅行に行ったりされていて、楽しそうですよ。

見守るアンテナを広げていけたらと思います

渡辺

元気な高齢者はたくさんいますが、大丈夫そうにみえても手を貸してあげた方がいい人も多いです。直接手を貸さなくても、気になったら様子をみていてあげるのも見守りだと思います。お店で買い物をしていると何度も同じものを買っている人は案外いらっしゃいますよ。身の回りには、そんな高齢者を目にする機会がたくさんあるんですが、私たちのほうが意識するかどうかなのかな。それだけで、優しい社会に変わってくるんじゃないでしょうか。

町田

僕は、仕事で普段から高齢者と接していますが、同世代には機会がない人も多いと思います。だから、気になっても声をかけたり、手助けしたりする一歩が踏み出せないということがあるかもしれません。まずは、自分のおばあちゃんやおじいちゃんと触れ合うことから始めたらいいのかな。話を聞いてあげるだけでも喜んでもらえます。そこから、高齢の方がどんなことに困っているのかを理解するアンテナを広げていけると思います。

宗政

身近な高齢者としっかり接しておくと、ゆっくり歩いているおばあちゃんをみたときに「ひざが痛いのかな」と考えられるようになりますよね。年を取ったら体もしんどくなるし、物忘れもするし、料理も面倒になります。老化を当たり前のことだと知っていると、町で見かける高齢者への接し方も変わるのかなと思いますね。

町田

「あれ?」と感じるセンサーも大事かな。例えば、配達に伺ったときに、いつものように元気に話をされていても、全然違う注文書を2回、3回と続けて出されることがあります。そのときに、「認知症かもしれないぞ」と気づくかどうかで、寄り添える距離が変わるのかなと思います。

共通の趣味を持つ人とつながるかもしれません

渡辺

やっぱり、あいさつと笑顔っていうのは大事だと思います。母の介護で車イスを押して歩いているときに、いろんな人に出会いました。お店の人、病院の人、高齢者施設に来ている人、近所の人・・。こちらから「こんにちは~!」と声をかけるようにしていたんですよ。簡単ではないですけどね。黙々と歩いていては、地域の触れ合いにはならないですから。それでも困っている人に自然に声をかけられるようになるまで2年くらいかかりましたよ。声をかけることに慣れていくことも必要ですね。

宗政

高齢の方との会話に慣れていないと、初めのうちは緊張したり気を遣ったりするかもしれないです。でも、何度も接しているうちに“普通におしゃべりしたらいいんだ!”ってなります。あいさつする人が増えるのは、自分のためにもいいことだと思います。おじいちゃん、おばあちゃんたちがいて、親の世代がいて、自分たちがいる。そして、自分たちが次の世代につなげていくんだなということを感じてほしいですね。

町田

あいさつする人が増えたら、囲碁とか将棋とか共通の趣味を持つ人とつながれるかもしれないですね。大学生のとき、緊張しながら高齢者の集まりの中に入ってみたら意外とちやほやされました。それが居心地よくて、壁とかなくなって。高齢者支援の仕事がしたいなと思ったきっかけにもなったんです。触れ合ってみたら温かいし、ほっこりする。その感覚を他の人にもなんとか知ってほしいです。

渡辺

そういえば、若いイケメンにはかなわないという出来事がありました。高齢の方向けのふれあい喫茶をしているんですけどね。ある日、お茶とお菓子、映画まで準備してみなさんが来られるのを待っていたんですが、誰も来なくて・・。どうしたのかなと心配していると、男子フィギュアスケートの大会2日目でフリーの演技を放送していて。優勝者が決まるまで待たされました。

宗政

映画じゃなくて、ライブビューイングにしたらよかったですね(笑)

町田

次の世代である僕たちに伝えたいことがあったら教えてほしいです。

宗政

小さくまとまらないで、いろんな人と関わりを持って生きていってほしいですね。それが自分を育ててくれると思います。うちのNPOも若い人たちに関わってもらって、多世代が活躍できる組織に発展させたいと考えています。そのために、子育て中のお母さんが働きやすい環境を作って、事業の利益を上げていけるように頑張ります。

渡辺

「可愛いおばあちゃんになりたい」という人がいますが、私はまだ「可愛いおばあちゃん」に会ったことがないんですよね。誰だって年を取るとしわも増えるし、耳だって遠くなる、手だってガサガサしてきます。「そんなもんなんやで」「それが普通なんやで」と前向きに受け入れて、一緒にご飯を食べたり、友だちになったりしてほしいです。あいさつと笑顔が溢れている。それが当たり前の社会になってほしいですね。

撮影場所:神戸市垂水区(西須磨だんらん・妙法寺川左岸公園)

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 11 住み続けられるまちづくりを

町田将人が感じたこと

渡辺さんのフットワークの軽さとパワフルさ、宗政さんの周りを包み込むような優しさに感銘を受けました。そしてお二人と話をさせていただいて、まずは自分のできることから社会に貢献していくことが大切なのだと学びました。
高齢者支援というと難しいように感じますが、きっかけは身近なところにあります。自分の親や祖父母、ご近所さんを大切にする。それがはじめの一歩、いや半歩かもしれませんが前進だと思います。
生きていれば、誰でも年齢を重ねます。自分が高齢になった時に、どんな社会であってほしいか。私のような若い世代が、このようなことを考えることが増えれば高齢者に優しい社会を築いていけるのではないでしょうか。
渡辺さんの「笑顔とあいさつを大切にする」というお話が印象的でした。孤独死や過疎など高齢化の負の側面ばかりがクローズアップされることが多いですが、こんな時代だからこそ笑顔とあいさつで人と人が繋がりあうことが重要です。若い人も年配の人も、お互いにパワーを与え合う。少しの変化が大きな変化を生むと思うし、これからの未来は明るいと思います。

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