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「もったいない」では
限界なのかもしれないですね

2019年1月14日

食品ロスとは、食べられるのに捨てられている食品のこと。農林水産省2015年度推計によると、日本で1年間に出る食品ロスは食品関連事業者から約357万トン、一般家庭から約289万トン。合わせて約646万トンの食品が廃棄されています。国民一人ひとりが、茶碗1杯分のごはん(約139g)を毎日捨て続けていることになります。

田中 温子

生活協同組合コープこうべ 2013年入所。協同購入センターで勤務のあと、シンガポールの生協で研修。現在は店舗で農産部門を担当。

知浩さん

認定特定非営利活動法人フードバンク関西副理事長。食べられるのに不要になった食品を個人や企業から引き取り、食糧を必要としている人や団体に届ける活動を行う。
https://foodbankkansai.org/

竹下 友里絵さん

神戸大学農学部。食のアンバランスを解消し、「世界人口を「おいしい!」で満たす」をビジョンに「タベモノガタリ」を立ち上げ、1月に起業予定。
https://ja-jp.facebook.com/tabemonogatari0326/

食べ物が食卓に並ぶまでのストーリーを知る機会がない

川﨑

フードバンク関西は活動を始めて15年になります。企業や個人から提供された安全安心な余剰食品をリユースして、食品を必要とする個人や団体へ届ける活動をしています。一番大切にしているのは、食品を提供する側にも、受け取る側にも喜んでもらうことです。

竹下

半年前に「タベモノガタリ」を立ち上げました。主に神戸市北区・西区の農家と提携しながら、「規格外」によって捨てられる農産物をなくすために、見た目や形による規格を持たない八百屋をスタートしようとしています。まもなく本格的に事業をスタートします。

田中

コープこうべの店舗で、農産部門の担当をしています。異動になってまだ1年も経っていなくて店舗の仕事を勉強中です。食品ロスについては、学生のときから問題意識をもっています。幼少期に祖父母と一緒にくらしていたこともあり、食べ物を粗末にしてはいけないと教えられました。食べ物を大事にできる社会になってほしいと思っています。

竹下

活動のきっかけは高校生のとき。留学先のカナダで、食べきれずに残った料理を当たり前のように捨てるのを見たことです。私も母に「食べ物を大事にせんとあかん」と言われて育ったので衝撃を受けました。貧困や飢餓などで食べることに困っている人がいるのに、その一方で簡単に食べ物を捨てている。世界全体での食のアンバランスを感じました。調べてみたら、日本でもたくさん捨てられていることがわかって。だったら、まず日本からどうにかしたいって思いました。

川﨑

今の日本は食べられるのに廃棄される食品が年間で約646万トンもあります。自給率が低いといいながら、こんなに食べ物を無駄にしている。このままでは、子どもたちへのしわ寄せが懸念され、行動を起こす必要があると感じています。

田中

食べ物を簡単に捨ててしまうのは、自分の食卓に並ぶまでの過程を想像できないからじゃないでしょうか。忙しい毎日のなかで、土を耕して種をまく、魚や肉をさばく、調理をするなどのストーリーを知る機会がない。想像力が足りないことが、いろんな問題につながっていて、その一番身近なものが食品ロスじゃないかと思います。

竹下

食育には問題意識を持っています。例えば、子どもたちが遠足でサツマイモ堀りをするとき、農場ではあらかじめ少し浮かせておくそうです。本当のイモ掘りは重労働だから。農業の楽しい場面だけじゃなくて、しんどいところもちゃんと知っていれば、「農家さんありがとう」という気持ちが食べ物にのりやすいのかなと思いますね。

「フードドライブ」の活動が広がってきました

川﨑

私たちは、食品企業に余剰食品の提供をお願いするのですが、製造者責任や3分の1ルールというのがあって、限られた量しか寄付してもらえません。商品として扱えないが食べ物として全く問題がないのに、本当に残念です。
原因の一つは、フードバンク事業を支援する法律が十分に整備されていないから。フードバンク活動が活発な国では、フードバンクに食品提供を促す法律があり、事故に備えての免責や公的保険制度が整っています。私たちは、日本でも法整備がすすむように働きかけをしています。

※ 3分の1ルール:製造日から賞味期限までの期間を「納品期限」「販売期限」「賞味期限」に3等分する商習慣。それぞれの期限ごとに食品廃棄が発生する。

竹下

企業が余剰食品を寄付するために一番コストがかかるのが輸送で、それを考えると廃棄するという判断になるのかもしれないですね。

川﨑

輸送費より廃棄する方が高くつく場合も多いんですよ。廃棄するときにも輸送費はかかりますしね。だから、近くで融通し合うのも大事な視点です。何より、お金と環境負荷をかけて、食べられるものを捨ててしまうことがもったいない。行政・企業・消費者がそれぞれの立場で自分の問題として真剣に考えんといかんと思っています。

田中

食品ロスを減らすことは生産から消費の間を担う小売業の努力のみせどころ。「命の糧」である食べ物を大切にできる社会にしていきたいです。

川﨑

まずは、一人ひとりができることをやっていくことですね。「家にある食品をゴミにしない」「余分な食品を買わない」「買ったものは食べきる」。あと、過度な鮮度意識をやめる。例えば牛乳。すぐに飲む予定なら、賞味期限は3日か4日あればいいじゃないかと手前にあるものから買ってほしい。小さなことですが、一人ひとりの行動が大きな力になります。

竹下

農学部の論文を読んでいると家庭の食品ロスの原因のひとつとして「料理をしなくなって、調理技術が劣ってきたこと」があげられています。例えば、ブロッコリーの芯が食べられることを知らない。だから、本当は食べられるのに食べられないと思って捨ててしまうみたいな。そんなちょっとしたことの積み重ねでロスが増えている。でっかく「食品ロスをなくそう!」と言う前に、「ここ食べられるの?」とか、「買い物に行く前に冷蔵庫をチェックする」とか。その程度で食品ロスは減っていくと思います。

田中

私は新入職員のころ宅配で配達をしていたのですが、返品で引き取った商品は廃棄になるルールでした。膨大な廃棄の量を見て、みんな心を痛めていました。「どうにかできないのかな」と、モヤモヤをちゃんと声に出したこともあって、今は返品された食品をフードバンク関西さんに引き取ってもらえるようになりました。
これからの人たちのためにも、疑問に思ったことを声に出していいんだっていう組織風土にしていきたいですね。

川﨑

フードドライブは大きな力になっているんですよ。フードバンクには個人からの食品の寄付もたくさん届けられて、お米やレトルト食品、缶詰、調味料などは、お届けする方に喜んでもらえます。

田中

お店でもフードドライブを受け付ける期間があります。組合員も職員もはじめは「何だろう?」って感じだったのですが、少しずつ家庭の余剰食品を持ってきてくださる人が増えてきました。

川﨑

食品を届けていると、家庭に問題を抱えているたくさんのお子さんに出会います。食品を受け取ったお子さんが、社会とのつながりを感じて夢や希望を持って育ってほしい。食品ロスと関係がない話ではなく、私たちフードバンクが存在する価値だと思っています。

※ フードドライブ:家庭で余っている食品を学校や職場などに持ち寄って、それらをまとめて地域の福祉団体や施設、フードバンクに寄付する活動

食品ロスを減らすライフスタイルが“かっこいい”

竹下

「もったいない」だけじゃ、限界が来ているのかなという気がします。今のように食べ物が溢れている状況だと、食糧難だった時代の「米粒一つを大事にする」という感覚がわからないんじゃないかって。「もったいない」だけじゃ、食品ロスは無くならないのかもって思います。

田中

「もったいない」だけでは限界が来ている・・そうかもしれないですね。今の時代、みんなが本気になったら食品ロスが減るんやということを、どうしたら広げていけるでしょう。

竹下

一人ひとりが自分らしいライフスタイルを追求するというのはどうでしょう。私は無駄がない生き方ってかっこいいと思っているので、本当に自分に必要なものが何かを見直します。誰かのために頑張るのは疲れるけど、自分的に豊かなライフスタイルを送りたい。じゃあ、不要なものは減らそうとなれば・・。

田中

食品ロスを減らすことが、かっこいい。そんなライフスタイルをSNSとかで発信するのもいいですね。

川﨑

特効薬や即効性はないですが、できるところがする。やれる人がする。とにかく行動しないとすべては始まらないですよ。

竹下

そうですね。今、頑張ってくれている人には続けてもらいつつ、そこまで頑張れない人は、できることでちょっと頑張る。可食部分を捨てないとか、冷蔵庫をチェックして不要なものは買わないとか。めっちゃ頑張らなくてもいいから、自分にできることを"とりあえず"やってみたらいいんですよね。

田中

「大根は冷凍すると味しみがよくなりますよ!」って売り場で伝えていきます。冷凍できるんやということがわかったら、ライフスタイルの改善にもつながるかなって。小さなことですが、買い物から変えていくことが大事だと思ってます。企業の行動を決めてくれるのは消費者ですから。

川﨑

何もしなければゼロだけど、小さなことでもやったら何かが伝わりますよ。中学生や高校生も含めて、若い人が関心を持ってできることからやっていってほしいですね。

撮影場所:芦屋市(フードバンク関西・公光橋)

  • 2 飢餓をゼロに
  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 10 人や国の不平等をなくそう
  • 12 つくる責任つかう責任

田中温子が感じたこと

食品ロスについて、活躍されているお二人とお話する機会がいただけて感謝しています。
竹下さんのお話のなかで、戦争を経験しておらず、食べ物であふれている今の社会しか知らない人たちに対して「もったいない」という感情に働きかけるのは限界がきているのでは、というのが印象的でした。みんながもっと自分自身のライフスタイルを追求して、無駄にしない。食べものに限らず、モノが生まれるまでのストーリーをちゃんと知って、大切に食べる、つかう。必要な量を守ってシンプルにくらす。そういう生き方がクールだし、自分にとって心地よい。これからはそういう価値観のほうが受け入れられやすいのかもしれないなと感じました。
川﨑さんから、今の社会においても本当に食べ物を必要としている人がいて、食品の提供を大変喜んでもらっている。栄養のある生鮮食品も届けたいというお話がありましたが、実際にご自身が自家用車で食品を運んで活動されているので、そういった言葉にも重みがありました。
たとえば、多くの野菜やおかずは冷凍すれば長く保存できること、余すことなくつかう調理法や栄養価などを、消費者にわかりやすくカジュアルにお伝えするというのは、流通の末端に携わっている私たちの頑張りどころだと思います。
「つくる」と「つかう(たべる)」の距離を縮めていきたいね、と職員同士で話をしたことがあります。商品の生産から消費にいたるまでのストーリーをのせて、組合員にお渡しする責任をもつこと。「よりよく生きたい。賢い消費者でありたい。自分たちのお買い物によって社会をよくしていきたい。コープで買い物することがそうであってほしい」という期待に、ちゃんと応えられる存在でありたいなあと、一職員として思っています。

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