CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 株式会社ミライロ 垣内俊哉さん×コープこうべ 西山 善之

左:西山 善之 右:垣内 俊哉さん

2018年5月14日

第12回 バリアを超えて情報を共有し合えるツールなんですね

「バリア(障害)をバリュー(価値)に変える」という言葉を株式会社ミライロのホームページで見つけて興味を持ち、代表取締役社長の垣内俊哉さんにお会いしたいと思いました。事業の中で気になったBmaps(ビーマップ)の取り組みを中心にお話を聞いてきました。

Bmapsは店舗や施設の情報を投稿し共有できるアプリですよね。

僕のように車イスを使っている人や高齢者、妊婦、ベビーカー利用者、外国人などが外出するときに求める情報を共有するアプリです。訪れた場所の情報を投稿したり、行きたい場所の状況を検索したりできます。日本財団の支援を受けて開発し、特定非営利活動法人CANPANセンターと共同運営をしています。

垣内さんは大学生のときにバリアフリーマップやバリアフリー情報の発信事業を考案されていたそうですが、それがBmapsの開発につながっているのでしょうか。

写真提供:株式会社ミライロ

Bmapsは従来のバリアフリーマップを進化させたサービスです。例えば、段差の情報は「0段」「1段」「2段以上」で表示しています。車イスやベビーカーユーザーにとっては、施設の入り口にある段差が何段なのかという情報が必要です。段差が1段だったら車イスで乗り上げることができても、2段以上あると補助が必要になるかもしれません。たった1段で状況が大きく違ってきます。また、コンセントの有無は、パソコンやスマートフォンだけではなく、電動車イスの充電ができるという情報でもあります。視覚に障害があって紙幣や硬貨を数えることが不安な人には、クレジットカードや電子マネーが使用できるという情報があると安心です。これは、日本語が話せない海外からの旅行者にとっても便利な情報です。

身体的な特性や年齢、国籍などのバリアを超えて、情報を共有し合えるツールがBmapsなんですね。僕も使ってみたのですが、段差の数や店内の広さ、静かさ等を表すアイコンがわかりやすかったです。

アイコンもそうですが、ユーザー同士が共有するチェック項目の選定には特に力を入れました。Bmapsをすべての人にとって使いやすいサービスにするには、たくさんの情報が集まらなければ意味がありません。そうなるためには、情報を投稿しやすくすることも大事なポイントです。2014年のスタート時にはたくさんあったチェック項目を簡単でわかりやすい16項目に絞っていきました。

「明るさ」や「静かさ」という項目だと、パッと見て自分が感じたままに投稿できます。階段の下にある店舗の入り口の写真もあって、建物の状況が把握しやすかったです。

最も伝わりやすく役に立つのが写真で投稿された情報です。そこに口コミや簡単な説明があると、現地の情報がさらによく伝わります。口コミや説明は目が不自由で写真を見ることができない人にも役立ちます。

御社ではBmapsを使った「ブレーメンの調査隊」というイベントを各地で開催されています。多くの人を巻き込んでいける取り組みですね。

ブレーメンの調査隊は、Bmapsを活用したバリアフリー情報の調査イベントです。レクチャーを受けた後、車イスに乗って町へ出て、バリアフリー情報を収集するというものです。CSRや社員教育などの一環で、企業や団体から依頼を受けて実施してきました。

実際に活動している風景をインターネットで見ました。活動の輪は広がっていますか。

メディアで紹介されるようになって、中学や高校で授業の一環として実施したい、商店街・地域の活性化のために行いたいというお話をいただくようになりました。個人で参加したいという声も多く寄せられています。

授業の一環にもなっているのですね。

スマートフォン一つ、指先一つでできる社会貢献があることを伝えていきたいです。ブレーメンの調査隊はそのための取り組みです。

写真提供:株式会社ミライロ

2020年には海外からたくさんの人が訪れると思います。それまでにBmapsのユーザーが増えていくといいですね。

これまで、パラリンピック開催地の数か国に行ってきましたが、バリアフリーなお店を探すのは大変でした。

どのような状況だったんですか。

食事をするために、車イスで入れる店を一軒一軒回って探す必要がありました。今の日本でも同じことが起こっていると思います。このような不便を解消することがビジネスチャンスになると感じました。

訪れた国によってサポートや対応に違いはありましたか。

ブラジルのリオではどこに行っても誰かが声をかけてくれました。それはブラジルの国民性ゆえにできることだと思います。日本人は慎重ですから、知識や経験がないと声をかけることをためらうかもしれません。心のバリアフリーも進める必要があると思っています。

食事をする場所、宿泊施設、欲しいものが買える店舗などを、Bmapsで簡単に探せるようになるといいですね。

Bmapsは日本語だけではなく英語、スペイン語に対応しています。今後は、韓国語、中国語と対応言語を増やし、多くの声や情報を集めながらより使い勝手の良いサービスにしていきます。5年、10年、20年、と必要とされ続けるサービスになると思っています。

写真提供:株式会社ミライロ

Bmapsを広めるにあたって特に働きかけたい人たちはいますか。

学生や若い世代に関わってもらえると良いと思います。特に小学生には、ブレーメンの調査隊を体験してほしいです。これからの日本をつくっていくのは彼らなので、幼いころから多様な視点を持ってもらうことは大きな社会的投資になります。

垣内さんは困難な経験をされながらも、常に何かを変えようと行動されてきたと思います。その原動力はなんですか。

学生時代はとにかく自分自身の状況が良くなるように走って、あがいて、もがいていましたね。リハビリに専念するために高校を休学したときには、自分の具体的な将来設計を何パターンか用意して親や先生を説得しました。そういった経験から根拠を示すための下準備の大切さと、それを伝えたい人に対して真剣に向き合うことを学びました。これは自分にとって大きな財産になったと思います。

垣内さんとともにミライロを立ち上げた取締役副社長の民野剛郎(たみの たけろう)さんとの出会いや、活動を始めたきっかけを教えていただけますか。

僕たちは大学で出会いました。初めはお互いに“いけ好かないやつ”くらいの印象でした。僕は金髪でピアスを3つくらいつけていたし、民野も髪を染めていたのである意味浮いていたと思います(笑)。一緒に何かをしたいと思ったきっかけは2年目くらいに学食に行ったときの民野の行動です。
学食ではトレーに食べたいものをとって会計をするという方式だったんですが、僕の周りにはサポートしてくれる友だちが多くいました。車イスをこぎながら自分で運べるのですが、善意で声をかけてくれているので任せることにしていました。

周りの友だちは良かれと思って手伝ってくれていたのですね。

そんな状況に慣れていた頃に民野と食事に行ったんです。彼は一切手伝う様子がありませんでした。そして、食事が終わると当たり前のように「はい、じゃんけん」と声をかけてきました。負けた方が皿を片付けるという意味なのですが、僕は普段その“じゃんけん”に参加していなかったんです。でも、多少もやもやした気持ちでいたのも事実です。
民野が自然にそういった接し方をしてきたとき、「共に生きていきたいのはこういう人だ」と強く感じました。彼は考えなしにそんな態度をとったのではありません。僕自身を見ているからこそ、このくらい自分でできるだろうと判断してくれたのです。究極の思いやりがないとそんな発言はできないし、公平に人と接することはできないと思います。僕は「彼と一緒に何かやりたい」と考えるようになりました。

自然にそんな接し方ができるって本当にすごい人だと思います。

当時は助けられる存在・弱い人として見られることが嫌で派手な髪の色にしたりピアスをつけたりしていたんです。でも、民野と一緒に行動するようになって、自然体の自分でいられるようになりました。「お前はお前にできることをやれよ」という民野との関係性は当時から変わっていません。今も昔もこれからも民野は一番尊敬できる存在です。

今後の展望として短期的、長期的にやっていきたいことはありますか。

バリアの解消をさまざまなタイミングで進めていきたいです。バリアは大きく環境・意識・情報の3つに分けられます。環境のバリアは、例えば段差があればスロープを、階段だけならばエレベーターをつけることでなくなります。意識のバリアは教育で解消していけます。そして情報のバリア解消の一つとして、「誰もが行きたい場所に安心して出かけられる情報があること」が挙げられます。

外出時に困難を感じる人は多くいます。これまでは、外出先や旅行先で想定されるバリアとその解消方法を事前に調べておく必要がありました。Bmapsが広まればそのような負担は軽減しますね。

「苦労は買ってでもしろ」と言いますが、情報収集以外にも人にはそれぞれ苦労や課題はたくさんあります。Bmapsのユーザーが増えて「行きたいところへ行く」ための情報がそこに集まっていると、これまで情報収集に費やしていた時間を別の課題と向き合うことに使えます。
これから生まれてくる子どもたちに自分と同じ苦労をさせないこと、しなくてもいい不便・不自由を減らしていくことが僕たちの使命だと思っています。

株式会社ミライロ

理念は、バリア(障害)をバリュー(価値)に変える「バリアバリュー」。経済性と社会性を両立させることで、日本を世界一のユニバーサルデザイン先進国へ導くための事業をすすめている。代表取締役の垣内俊哉さんは、一般社団法人日本ユニバーサルマナー協会代表理事、日本財団パラリンピックサポートセンター顧問、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アドバイザーでもある。
URL:http://www.mirairo.co.jp/
Bmapsのダウンロードはこちらから:http://web.bmaps.world/

インタビューを終えて・・・

垣内さんはメディアで紹介されることも多く、注目を集めている時の人です。垣内さんは語られる内容にも、姿にもエネルギーが満ちあふれていて圧倒されました。同世代とは思えないくらいです。課題としてとらえたことを常に良い方向へ導こうとする垣内さんの姿勢が周囲の人や社会を変えていることを肌で感じました。強い意志を持ち、本質をとらえて行動すること、伝えることがいかに大切かを知りました。
バリアフリーやユニバーサルデザインに対する関心が高まっている今の日本で、Bmapsのようなツールやユニバーサルマナーがしっかり根付いていけば良いなと思います。 垣内さんのお話を聞いて、自分自身にバリアに対する認識やマナーが乏しいことに改めて気づきました。自分の目の前で困っている人がいるときに行動をとれるように、当事者意識を持ってバリアフリーやユニバーサルマナーに関する知識や認識を正しく持つことがとても重要だと思います。株式会社ミライロの活動の中にはBmapsのように今すぐにできるものもあります。今後も垣内さんたちの活動に注目し、私も関わっていきたいです。

文:西山 善之(2014年入所)

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