CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 特定非営利活動法人インターナショクナル 菊池 信孝さん×コープこうべ 岩田 健二朗

左:菊池 信孝さん 右:岩田 健二朗

2017年10月18日

第8回 前編 異なる文化や多様性が身近なものに感じました

昨年、コープこうべで開催したイベントに、NPO法人インターナショクナルの菊池信孝さんに登壇してもらったのですが、私は実行委員で裏方をしていたので、菊池さんの話を聞くことができませんでした。そこで、今回インタビューをお願いしてじっくりとお話を伺いました。

【後編】すべての活動が「食」でつながっているんですね に続きます →

団体を立ち上げるときにNPOという形を選んだのには何か理由があったんですか。

当時、他の選択肢がなかったというのが正直なところです。僕たちの活動はボランティア寄りだったし、活動資金も多くなかったので。でも、バリアを取り除くために作ったツールを丁寧に広げていきたかったので、社会的な信用が必要になると思って、NPO法人として立ち上げました。

企業で働きながら、インターナショクナルの活動をされていたそうですが。

そうなんです。大学を卒業して広告代理店に就職しました。出勤前と夜仕事が終わってからの時間で活動に取り組んでいたのですが、忙しくなったこともあり、1年あまりで退職して専念しました。

インターナショクナルの活動について教えてください。

スタートは、「食べられないもの」「食べてはいけないもの」のバリアをなくすツール「FOODPICT(フードピクト)」を作って広める活動でした。そこから発展して「WORLD SHOKU-IKU」や「THE JAPAN QUEST」という、異文化を学び多様性を理解するためのコミュニケーションプログラムを作り、学校や地域の団体で実施するようになりました。また、災害時避難所コミュニケーション支援カード「COMMUNICA(コミュニカ)」を開発して、教育機関や公共交通機関などに提供しています。

写真提供:NPO法人インターナショクナル

活動を始めたきっかけはありますか。

高校一年生の時「9.11」があり、リアルタイムで戦争が起こっているのを目の当たりにして国際平和や紛争解決に関わる仕事につきたいと考えるようになりました。
活動のきっかけとなったのは、大学生のとき。JICA(独立行政法人国際協力機構)のプログラムで来日している研修生の生活をサポートするボランティアでの体験です。
サウジアラビアから来た3人の研修生と大阪の梅田に食事に行き、「日本食を食べたい」と言われたので、お寿司や蕎麦などをすすめました。宗教上の理由で豚肉は食べられないことを知っていましたが、厳格なイスラム教徒である彼らは、「何が入っているのか」「食べられないものが本当に入っていないのか」を確かめないと不安で食事をすることができなかったんです。実際に厨房に入り作っているところを見せてほしいと言われたのですが、もちろん無理で、結局ファストフード店のフィッシュバーガーしか食べることはできませんでした。
この経験が現在の活動につながっています。

菊池さんのターニングポイントになって、それから何かがスタートしたんですね。

外国人の留学生が多い大学だったので、彼らに「普段何をどこで食べているのか」をヒアリングしました。その中で、学食にはハラル食品(イスラム教で食べてもよいと許可された食品)やベジタリアン食品の認証表示がなくて、昼食を食べるために家に帰っているなど、食事で苦労している留学生が多くいることを知ったんです。

そこで、同じ問題意識を持った友達と「食と国際交流を考えるサークル」みたいなゆるい感じで活動をスタートすることにしたんです。最初は学祭で出店していた80店舗に日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語で原材料を表記してもらいました。 アンケートを取ると好意的な意見がほとんどでしたが、中には4カ国語だけではカバーできない人もいて、「取り組みは嬉しいけれど、自分には理解できなかった」というものも...。そんな声に応えるには何ができるのか考えた結果、絵による食品表示を思いついたんです。

それが「FOODPICT(フードピクト)」ですね!

はい。言語に頼らない絵で表示するツールです。これで、言語や宗教といった文化の違いを超えて、安心して食事を楽しむことができます。

ビジネスコンペにも応募されたとか。

そうなんですよ。エッジ2007という社会的な課題を解決するビジネスプランのコンペに応募しました。
いろんな方にアドバイスを受けながら審査を通過していく中で、「食」の表示については持続性を担保するという視点や海外からの旅行者の増加への対応、アレルギーを持っている人への対応といった課題があることを知りました。

「FOODPICT」がどんどん進化していったんですね。

きっかけはイスラム教徒の研修生との経験だったんですが、活動を行っていく中で海外からの旅行者だけでなく、私たち日本人にとっても有効なツールだと感じるようになりました。
アレルギーを持っていたり、食文化が違っていたり、日本人だから聞けば分かると思われがちですが、聞くことをためらう人もいれば、そもそも外食を諦めている人も多いです。子どもや高齢者の「漢字が読めない」「小さい文字が読みにくい」といったことに対しても活用してもらうことが増えてきているんですよ。
現在、ISO(国際標準化機構)とJIS(日本工業規格)のピクトグラム制作ガイドラインと、CUD(カラーユニバーサルデザイン)を基に、世界1500人への国際調査から開発した14品目を「FOODPICT」として提供しています。
広い意味での多様性を前提としたコミュニケーションツールとして認知されてきているなと感じています。

「FOODPICT」から、他の活動も生まれていってますね。

「WORLD SHOKU-IKU」ですね。これができたのは、「食と多文化共生」をテーマにした特別授業をしてほしいという小学校の先生からの依頼がきっかけでした。その学校には、給食で食べられないものがあって弁当を持ってきている外国籍の児童がいたんです。
そこで、世界各国から集めたお菓子や食品パッケージを使い、実際に食べながら宗教や食文化を話し合うプログラムを作りました。「どうして彼・彼女が給食を食べないのか、お弁当を持ってきているのか」を理解してもらうことが目的のツールです。これまでで延べ1万人を超える参加者に参加してもらっています。

もう1つは「THE JAPAN QUEST」というフィールドワークです。グループで町歩きをしながら、文化の違いと共通項に気づき、学び合ってもらうことが目的です。参加者は日本人と外国人が半々なことが多いです。耳が聞こえない、目が見えないというハンディキャップを持った人が加わることもあって、文化の違いだけではなく多様性を学ぶ場になっています。
こちらは大人の参加者が多く、異なる宗教の人たちが仲良くなって、その後も交流を続けていることもあります。お互いのコミュニティをつないで新しい関わり合いが生まれていくきっかけになっていて面白いですよ。

写真提供:NPO法人インターナショクナル

3つの活動が同じテーマでつながっているんですね。

基本的にどの活動も文化の違いや多様性を理解するための手段という認識です。
その中でも「FOODPICT」は多様性をバリアとしないための触媒だと考えています。そもそもなぜ「FOODPICT」が必要なのか、多様性そのものを知ってもらうための活動が「WORLD SHOKU-IKU」や「THE JAPAN QUEST」かなと。
どちらかが大切というわけではなく、両輪で行っていくことを大切にしています。

特定非営利活動法人 インターナショクナル

宗教や文化、体質などの理由で「食べられないもの」「食べてはいけないものがある人」が、安心して「食」を選ぶことができる事業を核に、多様性・多文化の理解と交流を広げて、誰もが自分らしくいられる共生社会をめざしている。
URL:https://www.designtodiversity.com/

前編の終わりに

菊池さんはしっかりとヒアリングを行い、ニーズを聞き出すことから活動をスタートされていました。必要とされているものが何なのかを把握することが活動の基本となっています。
私自身は海外でのキャンプなどを通して、互いの食文化について実際に食べながら理解し合うといった経験があります。当時は感じませんでしたが、菊池さんの話を聞いて確かに自分とは違う食べ方だったり、主食にしている食べ物が違っていたことを思い出しました。文化の違いや多様性は身近にあることだと今は感じています。
インタビューの後編では菊池さんの新しい活動について聞いています。
それ今までなかったけど必要ですよね。と、思わず食いついてしまう面白い活動です。
私もお話しを伺っていてワクワクしました。ぜひ菊池さんの柔軟な発想と行動力を知って欲しいです。

文:岩田 健二朗(2014年入所)

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