CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 特定非営利活動法人スマイルスタイル 塩山 諒さん×コープこうべ 宮田 茉里奈

左:宮田 茉里奈 右:塩山 諒さん

2017年1月10日

第2回 「若者が働くこと」に絞ったのはなぜですか

大阪市西区にある若者就労支援施設「ハローライフ」。「しあわせを感じながら働く」ための情報発信基地で、「ハローライフ」を主催するNPO法人スマイルスタイル代表の塩山諒さんにお話を伺いました。

事業を立ち上げたきっかけを教えてください。

スマイルスタイルを創業したのは23歳の時でした。その頃、「学校の先生はもっとこうあってほしい」とか「ハローワークに行ったら空気が重いな」と違和感を感じることがありました。僕自身、学校に行ってなかった期間が長かったので、社会のレールから外れてしまうと普通に生きていくのが難しいと思っていました。それで違和感を解消したいという思いを持って事業を立ち上げました。

たくさんの社会的課題の中から「若者が働くこと」に絞ったのはなぜですか。

教育というのはあくまでも手段なのに、教育の中でレールから外れてしまうと、社会に出られない人たちが多いです。ゴールである社会がどうあったらいいのかを考えるべきだと思いました。不安定な時代の中で全員がサバイバルに生きていけるわけではありません。若者の就労支援は緊急度が高いのにプレイヤーが少ない状況で、自分たちにその役割を担うことが求められていると思ったんです。

今日お邪魔している「ハローライフ」について、教えてください。

大阪府が行う就労支援の事業に携わる中で、2011年に「大阪ニート100人会議」を行いました。みんながどう思っているか意見を抽出したら、「もっと公共サービスがなんとかならないのか」「ハローワークに行くと説教される」など不満が出てきました。すぐには実行できないことが多くて、もどかしい気持ちでした。若者がこんなに思いを持っていてアイデアが出るんだったら、それが完成しなくてもいいから、まず始めてみないとだめかなと思いました。行政では前例がないので、新しい就労支援の仕組みを作ってしまうのが早いと考えてハローライフを作りました。福祉でもないし、元々あるものでもないので、自分たちがやる意味があるんじゃないかと。反面、運営していくには教育機関、企業、行政とちゃんと共通言語を持ってコミュニケーションを取り、それぞれに利益がある形でやっていく必要がありました。

「民間のハローワーク」ですね。ここはカフェや本棚がありますが、ハローライフとして場所を持つこだわりは?

大阪ニート100人会議の時に「どんなハローワークだったらいいのか」を話す中で、「罪悪感がないところがいい」「図書館とか美術館みたいな空間がいいよね」という意見が出ました。キャリア相談だけだったらインターネットでもいいのですが、アナログに温もりがあるというか、人と関わっていく中での支援が重要だと思ったんです。インターネットよりもリアルな場の方が価値があるんじゃないかと。
ロケーションと空間は大事なので、公園の側で探しましたね。ここで「何のために生きているのか」も含めて自分の内面と向き合ってほしいと思っています。どのような肩書きという名の“パスポート”を身につけたら社会の中でいろいろな人たちと出会えるかを考えてほしいです。出会っていかないと変わらないですよね。人間が生きる目標は、成長と変化だと思っていて、どういう職業についたら最も成長できるのかを考えられるような場所にしたいですね。そこに本やイベント、出会いがあればいいなと。

写真提供:NPO法人スマイルスタイル

実際に若者の声を聞く中から案が出てきたんですね。

アイデアは自分の頭ではなく、誰かの頭の中にあるんですよね。課題が見えてきたら、関わるみんなの中からアイデアがぽんぽん出てきます。「今のハローワークは…」「今の行政は…」「今の会社は…」と言語化を重ねていくと、このハローライフの形がいいよねってなりました。

多くの人と接する機会の多い塩山さんですが、コミュニケーションするときに気をつけていることはありますか。

僕、社内で「しおちゃん」って呼ばれてるんですよ。行政の人や企業の社長さんも、みんな「しおちゃん」。コミュニケーションのスピードを早めるというのが大事なので、「スマイルスタイルの塩山さん」は長いじゃないですか。何かズレが起こるのはコミュニケーションのズレが原因なので、できるだけ話しやすい空気感を心掛けています。あとは、夜よく飲みに行きますね(笑)

今後、ハローライフを広めていきたいという思いはありますか。

ハローライフとしての商品や仕組みがしっかりと確立できれば、自然に広がっていくと思っています。日々試行錯誤しながら研究開発をすすめているのですが、若い人たちが希望を持ってやっていくために、次は住居に関する事業をすすめようとしています。年収180万円~200万円の人も結婚できて、しあわせにやっていける状況を作っていきたいです。今日本にある約800万戸の空き物件を活用すれば、もっとできることがたくさんあると思うんですよ。

特定非営利活動法人 スマイルスタイル 塩山 諒さん

企業や行政、教育機関などと連携して経営課題・事業課題解決のソーシャルデザインを手がける特定非営利活動法人スマイルスタイル代表。一人ひとりが、「ふつうのしあわせ」を感じることができる社会づくりをすすめる。
URL:http://smilestyle.jp

インタビューを終えて・・・

自らの不登校の経験を踏まえて、一歩社会に踏み出せない若者に寄り添って事業を行っている塩山さん。社会の課題に立ち向かう本気度を思い知りました。現実ととことん向き合い、実際に苦しむ人の声を集め、学校や行政と一緒に課題を解決していくのは、簡単なことではありません。20代前半で起業し、誰もやっていないことをやった人は、自分のアイデアで推し進めてきた人だと思っていました。けれど、塩山さんは違っていました。
「アイデアは人の頭にある」という言葉がとても印象的でした。みんなで課題を見つけ、一緒に考え、ゴールに向かって働くことや、家族みんなで子育てをしていくことが塩山さんのスタイルで、「しあわせを感じながら働く」ことを実践されているなと感じました。 「自らの経験を生かす」と言うのは簡単ですが、なかなかできないことです。私から見たらとてつもなく大きな一歩を踏み出した塩山さんと会って、「経験が結果的に役に立った」ではなく、私も自分の経験から何かを引っ張り出していきたい、そう思いました。

文:宮田茉里奈(2013年入所)

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