CROSS TALK コープこうべの組合員や職員が、社会的課題の解決を実践している人に話を聞き、レポートしていく連載企画です。

CrossTalk 特定非営利活動法人Homedoor 川口 加奈さん×コープこうべ 井上 拓人

左:井上 拓人(元コープこうべ職員/2017年9月退職) 右:川口 加奈さん

2016年12月1日

第1回 この問題に取り組むことに怖さはなかったですか

大阪に拠点を置き、シェアサイクル「HUBchari」を始めとする生活困窮者への支援活動を行っているNPO法人Homedoor。大学時代に同団体を立ち上げた代表・川口加奈さんにお話を伺いました。

“ホームレス”というと中高年の男性の方が多いのかな、というイメージですが。

そうですね。うちの支援活動の中では、女性は7%です。年齢は、29歳以下の方が7~8%、30歳代の方が23%、40歳代の方が20%ほど、といったところです。厚生労働省の発表するホームレスの平均年齢と比べると、10歳ほど若いですね。
ネットカフェのような深夜営業店舗にご協力いただいて、バナーを出したり店内に広告を出したりしたことで、若い人たちからの相談が増えたということはあると思います。

生活困窮者が、深夜営業店舗にですか。

「ネットカフェ難民」と呼ばれることがあるように、潜在的にいらっしゃるだろうとは思っていました。
私たちは、「ホームレス状態から抜け出したいと思ったら脱出できる出口づくり」と、「ホームレスになる前の段階で、なりたくないと思ったらならずに済む入り口封じ」の取り組みを続けてきました。出口づくりについてはある程度形になってきたので、次はホームレスになる前の段階の方にアプローチしていきたい、と思いました。一度路上で生活するとなってしまうと、尊厳やいろんなものを失ってしまうので、そうなる前に私たちの活動のことを知ってきてもらえれば、と。

川口さんは、大学生の時に自らHomedoorを立ち上げられています。生活困窮者の支援に取り組む組織・団体への就職、という選択肢もあったと思うのですが。

生活困窮者の人たちには、「自力で路上から脱出したい」・「働いてもう一度やり直したい」という人がいます。他に、そもそも希望が持てずにいる人、あとは精神疾患や知的障がいが理由で自分の状態や次のステップを認識できていない人がいます。すべての人にアプローチしたかったので、それなら自分でやる方がいいんじゃないか、と。

夜回り活動「ホムパト」の様子

それと、ホームレス状態になってしまうにはいろんな事情があって。家がないという状態は同じだけど、その経歴や仕事・職種はバラバラで、そういう人たちを支援するなら、多種多様な選択肢を提供する必要があるのではないかと思いました。いろんな団体がいろんな支援をしている方が、路上を脱出できる可能性が高まるかな、と思ったんです。

この問題に取り組むと決めることに怖さみたいなものはなかったですか。

当初は、ここまで大きくやろう、長くやろうという感じではありませんでした。ホームレス問題の解決に取り組みたいと思ったら、友人2人が一緒にやろうと集まってくれたので、サークル活動くらいの感じで始めました。その時はそこまで怖くはありませんでしたね。
活動を続ける中で、予想以上に注目されたり、多くの人が協力してくださったりする中で、私なんかでやっていけるのだろうかという不安はありました。

そんな中、「Homedoorでやっていこう」と覚悟を決めた瞬間やきっかけがあったのでしょうか。

大学3年生の時に、HUBchari(※1)の実験をしました。この時期に、ちょうど就職活動やインターンが始まることもあり、一緒に活動を始めた友人2人がやめました。その頃は、利益も生み出せていなかったですし、まだおっちゃんたちを雇っていたわけでもなかったので、私も一度就職してちゃんと勉強してからの方がうまくいくんじゃないかと思いました。

ただ、実験をやるまでにいろんな人が協力してくれていて、それは私のためにというよりは、「ホームレス問題をどうにかしたい」という私の思いに共感してもらってのことだったんです。自分がそこでやめてしまうと、もしかしたらホームレス問題を解決するチャンスや可能性を潰してしまうのでは、という気がしました。
そんな時に、実際に実験をやってみると予想以上に利用者数が増えたり、「こういうのがあったらいいと思っていた」というニーズを感じられました。私たちは、おっちゃんたちを雇うことができればよかっただけなのに、「まさか使ってくれる人たちもいいと思ってくれるとは」という感じで。
いろんな人がニーズを感じてくれるなら、続けていけるんじゃないか・潰れないんじゃないかと思いました。また、その様子をいろんなメディアに取り上げていただいて、それが実績となって、「HUBchari置いてもいいよ」という声もかけていただけたこともあって、やっていけそうかなと思えました。

※1 HUBchari:Homedoorが提供する、ホームレスの人たちの自転車修理技術を生かしたシェアサイクルシステム。大阪市内に8拠点を設け、ホームレスの人や生活保護を受けている人が運営しており、中間的就労の場として機能している。

現在6人のスタッフで活動されていますよね。この課題の解決に一緒に取り組む仲間集めについてお伺いします。

ホームレス支援という分野ってあまり認識されてないですし、一緒にやろうと言ってくれる人はいなかったです。そこで、中学校高校の後輩に声をかけて、一緒にやり始めて、そこから少しずつ人が増えていったという感じです。

この先の活動について、どのようなイメージをお持ちですか。

理想とする支援モデルがあって、それを10年間で完成させたいという思いがあります。それが大阪で完成させて、うまくいくようになって、他の地域でも役に立つものであれば展開できればいいな、と思います。
あとは、ホームレス状態から脱出したいと思ったら100%脱出できるように支援の精度を上げていく、支援できる人数を増やすことができればと考えています。

特定非営利活動法人 Homedoor 川口 加奈さん

ホームレス襲撃事件の根絶をめざし、炊出しや100人ワークショップなどの活動を開始。「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作る」というビジョンを掲げ、19歳で特定非営利活動法人Homedoorを設立。
URL:http://www.homedoor.org/

インタビューを終えて・・・

ホームレス問題を解決するためにHomedoorを立ち上げられた川口さん。起業という選択肢は当たり前ではないと思いますが、団体を立ち上げ活動を始められたことに対して、「反対の声はなかったですね」と即答されていたのが印象的でした。ホームレス状態を生み出さないという目標に向かって、考え込みすぎることなく、ポジティブに取り組んでこられたのだと感じました。
また、「ここでやめたら、ホームレス問題を解決する可能性を自ら潰してしまうのではないか」と思うほどに、この問題を自分ごととして捉えて活動を続けてこられたところも心に残りました。テレビや新聞、インターネットを通して、どのような社会的課題があるのかを知っていても、実際にそれらの課題に直面している当事者や現場を知らずに、遠く離れたところで話し合って終わる、というのでは解決は難しいように思います。おっちゃんたちと一緒に活動を続けてこられた川口さんのように、課題を抱える人々や現場を訪ねて一緒に考え、行動していきたいです。

文:井上 拓人

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